「経験の輪郭」
7月24日、MVRDVでの2年間の勤務を経て2001年にsuper-osを設立した吉村靖孝さんによるarchi_lecture vol.25「経験の輪郭」が行われた。吉村さんは5月にsuper-osでの活動を終え、現在は個人で事務所を構えて活動しているとのこと。
レクチャーは吉村さんの学生時代の修士設計の話から始まった。東京の高層化の制限の原因の1つとして羽田空港があり、離着陸の障害にならないように、滑走路から1/50の傾斜ですり鉢状に高さ制限がかかっている。この規制を逆手に取り、羽田空港を300m持ち上げることにより、高さの最高値が295mであったのが595mになり、これにより295mのもの2本よりは595mのもの1本の方が周囲への負担が小さくなるという提案だった。修士設計ならではのビッグプロジェクトだった。
今回のレクチャーのテーマである「経験の輪郭」とは意識の中に存在する輪郭。実際に見える輪郭ではなく、自分の経験を経て意識の中に見えてくる輪郭のことである。建築基準法・都市計画法により制限された建物のアウトラインであったり、特徴の無いワンルームのプランのことである。
ワンルームを例にして言えば、現在全く同じプランが大量に流通した結果、住人の生活が透けてしまうような公共性の高い状態を引き起こしている。これが吉村さんの言う「経験の輪郭」である。吉村さんはこの状態を危険に重い、自らが設計した「two-one」では、外壁に木目調サイディングや、住宅用既製サッシュを使い、さらにその設置位置や取り付け方法を変えたり、断面でのスラブの位置をずらしたりすることでワンルームの輪郭を曖昧にし、不透明度を高めると言う操作を行った。
MVRDVの設計したオランダ・アムステルダムのアイ河沿いの集合住宅では1ブロックごとテクスチャーを変え、輪郭をより際立たせたものがある。
吉村さんはMVRDVとは全く違った、独自の視点で建築を見ているようで、そのようなものの見方は学生時代に考えていたことや、接していたひとの影響を強く受けているようにも思えた。